4kaku design

マーケティングを勉強しているWebデザイナーのノート

2014年12月20日(土)に名古屋国際会議場で開催された「WCAN 2014 Winter」に参加しました。
今回は全編通して「コンテンツ」をテーマに、Web制作とは何か?を考えさせられました。

WCAN 2014 Winter


長谷川恭久さん「「なんとなく」を共有する、コンテンツを活かしたデザインプロセス」


WCAN Winterにご登壇いただくのが4、5回目の長谷川さん。
今までの冬WCANと比較して珍しい点として、3セッションすべてが「コンテンツ」にまつわる内容であることを挙げられていました。

今までのPCサイトは「箱だけ作って後でコンテンツ入れてね」

必要だから最上部にナビゲーションを置いて、華やかにしたいからメインビジュアル、そのあとに3カラムで平等に各事業部のコンテンツが入る…というのがパソコン用Webサイトのひとつの定番でした。しかし、省スペースを強いられるスマートフォンサイトの場合は通用しないことも多々あります。

  • レイアウトを組む
  • 装飾を添える
  • 魅力的な演出を加える

「派手な演出を加えて目を惹く」ことがゴールだった今までのWebサイトの手法は、スマートフォンが主役になった現在のWebには向きません。
これからのWebに必要なのは、以下のポイントを抑えること。平等に「横に並べる」ことが難しくなった今、上から下へ見ていけばストーリーを追えるコンテンツが必要になりました。

  • プライオリティを決める
  • パフォーマンスを考慮する
  • 利用者の役に立つ演出

派手な演出やグラフィカルなデザインが不要なのではなく、「お客さんにボタンを押してもらう」ための工夫として使うべきとのことでした。

重要なのは、「利用者が行動したい!と思ったタイミングに導線を設置すること」

スマートフォンサイト定番の「ハンバーガーアイコン」を例に、目標を達成するためのWebサイトについてのお話がありました。

まだまだハンバーガーアイコン(メニューへのリンク)が左上にあるサイトもたくさんあります。しかし、もしハンバーガーアイコンに手が届かなくても他のボタンから同じページにアクセスできるようなリンクを戦略的に置く必要があるとのことでした。これは、サイトのストーリーを考え抜かないと作れない仕様だと思います。

Webで情報を発信する側と受信する側の誤差を埋める工夫が必要

情報発信をしているWebサイトの管理者は商品スペックを売りにしているから大きく見せたけれど、肝心のエンドユーザーはスペックよりも商品のシナリオに興味があった…なんていうのはよくあることです。

デザイナーの重要な仕事は「利用者が行動したい!と思ったタイミングに導線を設置すること」。これでコンバージョンの高低が変わるそうです。

  • 利用者の今のニーズに応える
  • 行動を促すコンテンツ
  • ストーリーを構築

ユーザーは好きなタイミングでWebを見る

デバイスの販売数で見ると、PCがじわじわ下がる中、スマートフォンは急上昇しています。利用者数も年々モバイルでの利用者が逆転する結果となっていますが、単純にスマートフォン対応に舵を切ればいいというわけではないそうです。スマートフォンユーザーは増えているものの、スマートフォンとパソコンを併用する場合が多々あるから。

ユーザーが「サイトから逃げてしまう」限界値の一例

「0.1秒」が表示にかかっても快適でいられる時間、「1秒」はちょっとしんどくなってくる頃、「10秒」かかるとまず間違いなく離脱するボーダーラインだそうです。
「好きなデバイス」で「欲しい情報」を「1秒より早く」見たいというのがユーザーというものだと思っておけば間違いないのかもしれません。自分がユーザーになったときのことを考えれば身に覚えがありますね。

新しいことを学ぶことより、今までのノウハウを変えることのほうが大変

これは制作者というより、お客様の方が根深い問題かもしれません。Webという技術自体が25周年を迎えるそうで、Webに関わる人にはその間にしっかり溜め込んだノウハウがあります。新しい技術を学ぶよりも、この根付いたノウハウを変えていくことも「ひとつのデザイン」であるとのことでした。

スケッチをしながら構成を考えるのは、モバイルサイト設計の練習になる

PCサイトの場合は横に並べたり、カルーセルさせたり、隠したり並べたりすることができました。しかし、モバイルの場合は上から順にコンテンツを重ねていくしかありません。アナログに紙とペンでスケッチをすることで、お客様と一緒にコンテンツの重要度を考えることもできますし、サイト設計の練習にもなるそうです。

デザインには「データ」の裏付けが必要

「かっこいい、や、なんとなく、でデザインは成立しない」というワードが頭に残りました。デザイナーがセンスの有無やビジュアルの優劣だけでデザインを論じていては頭打ちになるので、「なんとなく」を視覚化することが重要だそうです。身近な方法だと、Google Analyticsのデータ等でデザインを補強する必要があります。

お金をいただいて作っている以上とてもむずかしいんですが、「利用者が欲しい情報」と「配信側が出したい情報」に隔たりがあるということは認めないといけません。

データは「人間像を作る材料」として使おう

例に挙げられたGoogle Analyticsにはたくさんの機能がありますが、ひとまず以下を抑えればユーザーを分析することはできるそうです。

  • 利用者は誰なのか?(地域、新規とリピーター、ユーザーのロイヤリティ、モバイルの利用状況)
  • どのように訪れたのか?
  • どの順序で利用したのか?

長期の傾向を見極める必要性

1ヶ月程度の訪問者数を見ても、特定のコンテンツがバズっただけかもしれませんし、局所的な内容しか得られません。どういうキーワードで、どのコンテンツが見られているかを研究することでそのWebサイトの本当の特徴が見えてきます。

キーワード(動機をみつける材料、必要なコンテンツを探す、利用者が使う言葉を学習)
チャンネル
すべての参照

ユーザーインタビューは仮説の検証をするためのもの

データはユーザーインタビューのための仮説作りにも使うことができます。いきなりユーザーインタビューをしても結果が散漫として結論が出にくいので、あらかじめデータを元に仮説を立て、それを裏付ける(または、間違いを見つける)ために使うべきとのことでした。

まとめ

「最近のユーザーは賢いです。1秒で自分に必要なものを判断します」と、長谷川さん。「コンテンツとは何か」のまとめがすごく納得だったので以下に転載します。

  • 利用者の目的や欲求を満たすもの
  • 文脈や動機の理解
  • レイアウトではなくプライオリティ

データの専門家であるマーケッター、クリエイティブがわかるデザイナーの属性を併せ持った制作者になるべきだと感じました。

斉藤 千寿さん「次世代Web制作成功の法則」

「すべては成果のために」をスローガンに掲げる株式会社キノトロープの斉藤さんからは「Webサイトの役割」というオーソドックスな部分と最新のユーザー事情についてお話いただきました。

1.Webサイトの役割とは

「Webサイトはお客様の問題解決ツールである」と斉藤さん。欲しいものが買えないECサイトに苛立つ反面、必要な情報に巡りあわせてくれるサイトもあります。目的をスムーズに達成する(=満足体験)ことの積み重ねが企業のブランド価値を上げていくことにつながるそうです。なかなか難しい目標ですが、大いに納得の内容でした。

2.Webサイトの現状 ユーザーの変化

私たちは制作者であると同時に、1ユーザーでもあります。自分のことだと考えるととてもよくわかりますが、スマートフォンの普及はWebサイトを劇的に変えました。すべてをゼロペースに戻して次世代の作り方を蓄積していく必要があるそうです。

ユーザーは目的のページにダイレクトに来る

Webサイトを制作していると、ついついトップページから目的のページへの導線を考えてしまいがちですが、実際のユーザーはGoogle検索で一気に目的のページへ来るとのこと。たしかに、自分の普段のスマホの使い方を考えたら納得でした。固定のページやサービスを使うことがあまりないので、ブラウザのホームがGoogleになっています。

Googleの傾向を見るとWebの今後がかかる

Googleが上位に上げるサイトの傾向を見ると、今後のWebのあるべき姿が見えてくるとのことでした。「ユーザーのニーズ」「ユーザーの目的」ありきで作られたサイトが上位に来る。

3.次世代Webサイトとは

ツークリックで問題解決できるサイトを作る!

「2.Webサイトの現状 ユーザーの変化」で解説された通り、ユーザーはトップページから順番にリンクを踏んでページを見てはくれません。なので、これからのWebは「Googleで検索」→「内部のページを直接表示」というのが自然な流れになります。

「ユーザーごとに表示するコンテンツを変えるべき」という話はよく聞きますが、斉藤さんが出されたAmazon.co.jpの例はとてもわかりやすかったです。Amazonを使ったことがある方ならご存知かとは思いますが、それまでの注文履歴や閲覧履歴によってトップページに表示される商品がかわります。今まで「Amazon独自の仕様と機能」だと思っていた見せ方がWeb業界全体に波及するのも必然だと斉藤さんのお話を聞いていて感じました。

生田 昌弘さん「Web制作者がやるべきこと」

生田さんのお話は2番目に登壇された斉藤さんの内容を受けて、さらに突っ込んだ内容となっていました。

制作会社の淘汰が始まる時代

生田さんご自身のキャリアになぞらえて「コンテンツを作ることを制作と呼ぶんだよ!」という強いお言葉が耳に残りました。デザインカンプを作って、コーディングをしてページができるのは「制作」というより「印刷」であり、サービスを作る、コンテンツを作ることが「制作」である以上、Web制作者をはじめモノをつくる人はもっとここを考えた方がいいとのことでした。

次世代だからやらなきゃいけない、ことではない

今回のWCANで一番ガツンときたのが、生田さんのこのお言葉でした。ユーザーの役に立つコンテンツを提供しなきゃいけないというのは、スマートフォンが普及した2014年だからではなく、Webサイトを作る上での基本ですよね…。

ユーザーニーズに最適化した次世代Webサイト構築のポイント

ユーザーニーズ=「いつでも」「どこからでも」「誰でも」「どんなデバイスからでも」アクセス可能であり、常にニーズとシチュエーションに応じた最適なコンテンツを提供すること。 Webサイトはそこを見に来るエンドユーザーのお客様の問題を解決するためのものなので、ユーザーのニーズに合わせることで成果が出ます。さらにそれが難しくなっている理由は、「ユーザーが製品を欲しいと思う時間が短くなっているから」。「お客様が欲しいタイミングで来てくれる」というWebの最大の強みを活かしたコンテンツの必要性についてお話いただきました。

ニーズ最適化した究極の状態は「Webに接続している」という意識がなくなるかもしれません。現在のスマートフォンの普及具合とユーザー層を考えると、リテラシーを踏まえたWeb制作が無理だというのも納得でした。

1.ユーザー体験シナリオ

イマドキの現実的なシナリオとして、「広告を見る」→「検索エンジン」→「検討」→「資料請求」→「購入」という流れを提示されました。「お客様が問題解決に至るためには様々な経路が存在する」ということで、リアル(窓口や実際に届く製品)もバーチャル(Webサイト)も目指すゴールにハッピーに辿り着けるかを考える必要があるとのこと。 メジャーな方法としてはペルソナやカスタマージャーニーマップでアプローチする分野ですが、抱える問題ごとにユーザーをひとまとめにしてしまうのも万能ではないんじゃないかと感じました。

ユーザーシナリオがよく練り上げられている例として、コンビニエンスストアを挙げられました。あらためて振り返ると、入店したばかりで両手が空いているときには立ち読みに両手が必要な雑誌コーナー、荷物が増えたレジの直前には重たいドリンク類があるなど、ターゲットである「ひとりで食事をする人」の問題を解決するための工夫に満ちていました。このお話を聞いた後に何軒かコンビニをまわってみたんですが、立地(=メインターゲット)に合わせてそれぞれ最適化されていてとても興味深かったです。

2.コンテンツ

コンテンツを作ることが「制作」であり、コンテンツとは情報である。 ただしどんな情報でもいいわけではなく、お客様のソリューションコンテンツを作るのがWeb制作者の仕事とのことでした。前述のユーザーニーズ最適化に必要なのは、このコンテンツを適材適所に表示する仕組みがソリューションコンテンツの提供には欠かせないということがわかりました。

3.粒度 コンポーネント・テンプレート

コンテンツを作るとまとめて載っけてしまいがちですが、ユーザーニーズ最適化のためには最小の単位(=コンポーネント)でコンテンツを管理して出し分けていく考え方をご紹介いただきました。部品を細かく分けておくと、よりこまやかにお客様の状況に寄り添えるようになりそうです。お客様側でその細かい部品をどう更新・管理していくかが課題になりそうです。

4.マルチデバイス対応

スマートフォンが普及したからスマホに対応、というよりはすべての入り口を整備するという意味でのマルチデバイス対応のお話でした。デバイスごとにコンテンツを出し分けるのも重要ですが、デバイスをまたいで行動するユーザーのゴールを

5.コンテンツ・データ一元管理

データからフロントを自由にする!ということで、基盤になるデータ(裏側)を触らなくても表示サイドの情報を修正・更新できる仕組みの必要性についてのお話でした。

今回のWCANのまとめ

日々の業務の中でついつい脳みその隅に追いやってしまいそうになる「なぜこのWebサイトを作るのか?」というとても大切な課題について、どう向き合うか考えさせられるWCANでした。いつもの色々な知識をつまみ食いできるセッション構成も好きなんですが、一日なにかひとつのテーマについて考えるというのも面白いアプローチだと思います。